甘い香りの家

どの家にも最初に入るその瞬間に感知する独特の香りがあります。

ドアを閉め外界と遮断しても、誰もが家の独特の香りを察知します。あなたの顔を舐めるように嗅ぐ飼い犬の息の臭い、新しいインクの香りとカビ臭さが混ざった書斎にある本の臭い、また、父親のかみそりやパイプタバコの臭いや、母親のシャンプーの匂いなど、各々の家にはそれぞれの臭いが存在しています。

“香り”は世界のどんな場所でも親密さを与える。

普段あまりにも馴染んでいるので自宅の香りにはなかなか気がつきませんが、旅行などで家を空け、何日かぶりに戻ってきたりすると、何かが違う時はすぐさまわかるはずです。

「我々の家は世界を縮小したようなもの。良く言われるように、家は、我々が最初に遭遇する世界であり、全ての感覚を関知する小宇宙だ。」
– ガストンバチェラード

宇宙に関する詩によくあるように、世界の楽園は未だ謎のままです。しかしながら、多かれ少なかれ、我々は自宅にその楽園を見つけようとしています。

“家”は我々を表す鏡です。それは、ライフストーリーを創り出す場であり、落ち着きを求める場所であったりします。また、本や宝物を保管する所であり、家族や友人とコミュニケーションをし、食べたり寝たりする場所でもあります。様々な思い出、年齢を重ねてきた今までの人生の旅の歴史がいっぱい詰まっているのが“家”なのです。

家、特定の人や場所、時間と強く関連している香りは、瞬間的な記憶を思い出させ、楽しい、悲しいといった感情的な反応を起こさせたりします。特定の香りがそのような記憶を誘発するのは、ほとんどの場合、瞬間的に脳から伝達され、感情的な反応を引き起こします。脳は、あなたが新しい香りと出会うと同時に、人や物を瞬間的に関連づけるのです。つまり、あなたの脳は香りと記憶を瞬時に紐づけ、例えばユリと葬式を関連づけたりします。そして一度関連づけられると、再び同じ香りにふれた時、その記憶や気分が引き出されるのです。

香りと脳の機能

嗅覚は、脳の感情を司る部分と最も密接に関連している感覚です。我々の脳の大部分は視覚的な情報の影響を受けています。また、我々の遺伝子は他の感覚(視覚や聴覚など)よりも嗅覚の影響を多分に受けています(1%)我々は悪臭を嫌い、避けるといった本能的能力も授かっていますが、それを言語で言い表す難しさも伴っています。しかし悪臭を嗅ぐと、我々は過去の出来事や記憶を思い起させるという、驚くべく能力を持っていることも事実なのです。

出典:
Aftel, Mandy. Fragrant: The Secret Life of Scent.  Penguin Publishing Group.
Rossi, Mariangela. Dillo con un profumo: Come scegliere la fragranza ideale (Italian Edition).
Ellena, Jean Claude. Viaggio sentimentale tra i profumi del mondo (Italian Edition)
The Chemistry of Fragrances: From Perfumer to Consumer. Royal Society of Chemistry.